●まくわうりジャム発売!(うちのレーベルからではありませんが)

kutaja2007-10-02

『いちじくジャム』『ざくろジャム』の続編として、2007年5月に開催されたライブ『まくわうりジャム』を、まるごとCD化したものが発売になりました!
初期くじらのメンバー、杉林、キオト、楠、全員参加、元バービーボーイズいまみちともたか氏も参加、元PSY・S、現在R・O・M・Aの安部王子氏も参加。旧オリジナル・メンバーから、自作電子楽器の米本実やパーカッションの松島玉三郎も参加。初参加メンバーとして、チェロの星衛、キーボードの鶴丸光が参戦・・・とまあ、本当に得体の知れないメンバーでライブやってしまいましたが、それをそのままCDにしてしまいました。
ハコde録レーベルから発売、下記のノーチラス・レコードさんのオンライン・ショップで、すでにネット販売が始まりました。
http://nautilus.shop-pro.jp/?pid=5198458
くたじゃ松島堂レーベルからのリリースではありませんが、ジャム・シリーズのジャンプ進化の一形態と思って、ぜひお聴きください!!

こちらのオンライン・ショップで購入できます ↓

まくわうりジャム
まくわうりジャム
価格:1,050円(税込)
ショップ:Nautilus Records on line shop

●『ざくろジャム』発売中

kutaja2007-07-12

ざくろジャム』には、比較的落ち着いた楽曲になったものを収録しています。
(このCDが生まれたいきさつは『いちじくジャム』の説明を参照してください)

○参加メンバーと使用楽器
●キオト (ex:くじら)  i-Book、ヴォコーダシンセ、ウクレレケーナサクソフォン、ピアノ、ハーモ二カ、ハルモニウム、パーカッション
●米本実(米本電音研究所) 自作電気楽器、カシオトーン
●松島玉三郎 (くたじゃ) パーカッション、ターンテーブル、CDJ、シンセドラム、バラフォン、ビリンバウ、大正琴、ヴォイス、油彩キャンバス、ぬいぐるみ
杉林恭雄 (くじら) 尺八、ヴォイス、グロッケン
●米本篤 (元ヴォイス団Kuu) ディジェリドゥ、口琴ホーメイ
●宮崎響子  バイオリン

即興曲につけられた、へんてこな曲名のかずかず!

1 分度器 / 2 ピラミッド・カレー / 3 せんぷうき / 4 ヴィヴィアン・イーストウッド / 5 きまじめだからできること / 6 虚数の情緒 / 7 ロスアラモス / 8 樽の中のワイン / 9 雲形定規 / 10 ラジオ / 11 あなたは本屋へ、わたしは花屋へ / 12 ヒモをたぐりよせる / 13 乱反射 / 14 体質改善 / 15 レコード針 / 16 100年間でできること / 17 砂風呂 / 18 地層 / 19 直列豆電球

¥1,050.-(消費税込み)

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ざくろジャム
ざくろジャム
価格:1,050円(税込)
ショップ:Nautilus Records on line shop

●『いちじくジャム』発売中

kutaja2007-07-11

元「くじら」のキオト氏の提案により始まったライブシリーズ「音響ジャムセッション」。
90年代後半の一種のブームとなった「音響派」とは何も関係ない、そのセッション。
どんなものだったかと言うと、「リハーサルなし、音による句会」のような自由なセッションであり、目指すは「白熱しないジャム」あるいは「参加者が演奏中ですら’聴き手’として楽しめるようなセッション」だった。
この脱力な企画に賛同したのは、民族打楽器奏者の松島玉三郎電子音楽界では有名な自作電子楽器の米本実氏。この3人でスタートし、その後「くじら」のヴォーカルの杉林恭雄氏が参加、即興系パフォーマーの米本篤氏も参加、と回を重ねるたびにメンバーが一人ずつ増えて行った。
使う楽器も、参加者の本来のイメージを大いに破っていた。
「くじら」のヴォーカルの杉林氏は尺八を奏で、「くじら」では当初ベーシストだったキオト氏はパソコンを操り、民族打楽器奏者のはずの松島氏がターンテーブルを逆回転させたりした。
生まれでた音は、いわゆるシリアスな即興音楽とは程遠く、環境音楽ともちがう、民族音楽ともちがう、まして電子音楽でもない、独特な『脱力音楽』として仕上がった。
2002年から2003年にかけて、4回にわたって決行されたこのセッションは、9時間弱におよぶ膨大な録音を残し、これを聴き返してみると、捨てがたい名セッションが多く、とにかく「おもしろい部分だけ抜き出した記録盤を作ってみよう」という話になったのです。

こうして生まれたのが『いちじくジャム』『ざくろジャム』の2枚です。
『いちじくジャム』には、比較的かわいい感じに仕上がったセッションを収録してます。

○参加メンバーと使用楽器
●キオト (ex:くじら)  i-Book、ヴォコーダシンセ、ウクレレケーナサクソフォン、ピアノ、ハーモニカ、ハルモニウム、パーカッション
●米本実(米本電音研究所) 自作電気楽器、カシオトーン
●松島玉三郎 (くたじゃ) パーカッション、ターンテーブル、CDJ、シンセドラム、バラフォン、ビリンバウ、大正琴、ヴォイス、油彩キャンバス、ぬいぐるみ
杉林恭雄 (くじら) 尺八、ヴォイス、グロッケン
●米本篤 (元ヴォイス団Kuu) ディジェリドゥ、口琴ホーメイ
●宮崎響子  バイオリン
SUBWAY  ラップトップ

即興曲につけられた、へんてこな曲名のかずかず!

1 ちょうつがい / 2 三重露光 1 / 3 バナナ・ブレッドのプディング / 4 あの娘は魔女 / 5 ガスキン、大いに怒る / 6 ノミのサーカス / 7 後悔する準備は出来ていた / 8 三重露光 2 / 9 ライス・プディング / 10 エレキもなか / 11 ガスキン食事中 / 12 配管工事 / 13 まずスープから / 14 ウィンドウ・ショッピング / 15 猫の舌 / 16 スペアリブ / 17 ヘクトパスカル / 18 渋谷収穫祭 / 19 1分間でできること / 20 シチューを煮こむ / 21 遠くの友人からの絵ハガキが、急にさまざなことを思い出させる

¥1,050.-(消費税込み)

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いちじくジャム
いちじくジャム
価格:1,050円(税込)
ショップ:Nautilus Records on line shop

●『マテリア・リズム リミックス&リフォーム展示会vol.1』発売中!

kutaja2007-07-10

コンピレーションCD

『マテリア・リズム リミックス&リフォーム展示会vol.1』発売中!
2005年1月に開催した同名イベントが大好評につき、待望のアルバム化。

超破格値 ¥500(税込み)

●収録楽曲 と アーティスト

・reform1    Materia-Rhythm
・reform2(D:Ray) SUBWAY
・reform3    Good Bye Girl
・reform4    鶴丸
・reform5    lgc design
・reform6    杉林恭雄(くじら)+Materia-Rhythm
・reform7    ammakasie noka
・reform8(君はマテリア・リズム)   米本実+松島玉三郎(+h_macid)
・reform9(Re:君はマテリア・リズム)     Materia-Rhythm

   mastering&sound treatment:h_macid

※このCDは、Materia-Rhythm=宮野義昭が、2003年から毎週発表し続けている環境音楽作品「週刊マテリア・リズム」の、1〜100号までを自由に使って新たなる音楽制作を試みた作品集です。

このCDのご注文および問い合わせは、くたじゃ松島堂の松島玉三郎まで。
 tel0422-45-0066 / kutaja@parkcity.ne.jp


     (くたじゃ報HPに戻る http://www1.parkcity.ne.jp/kutaja/kutaja/)

●音響ジャムセッション、はどのように始まったか ●

kutaja2007-07-09

●音響ジャムセッション、はどのように始まったか

『音響ジャムセッション』とは、2002年から2003年にかけてやっていた「リハーサルなし、音による句会」のような自由なセッションでした。目指すは「白熱しないジャム」あるいは「参加者が演奏中ですら’聴き手’として楽しめるようなセッション」でした。

そんなことが可能なのか?可能だったのだ!

「音響ジャムセッション」の発起人は、元「くじら」のキオトさん。

「くじら」の中でも、ベース、キー ボード、ギター、パーカッション、トランペット、とめまぐるしく担当楽器を変えた彼は、「不定形の音楽の面白さ」をつねに目指してましたが、「音響ジャム セッション」では、さらに彼の「風流人」としての趣が加わり、参加者にも波動が伝わって、独特なものとなりました。

もともと2002年よりも数年前に、音楽ビジネス界には『音響ブーム』というものがあり、その「音響」と、この「音響ジャム」は別物であったので、この名前でよいのか、当初私は疑問に思ったものです。

しかし、キオト氏は、自らの名前を「奇なる音」ではないか、と称し、「音がずれていく妙味』を「おとずれ」(訪れ)と名づけてみたり、くじらのヴォーカルの杉林さんと二人で、笛2本だけの録音をして『ツツヌケ』と称してみたり、日本人が「音」というものに「意味」をこめたり、こめなかったりする事にやたら興味があったようです。

そういう彼にとっての「音響」はもちろん「音」が「響く」ことであり、いわゆる『音響派』のことではなかった。そしてうまい具合に、共演者はそういうことがすぐわかる人々であったのです。

そうして、まるで水墨画に少し色のある絵の具をたらしたような、独自な脱力セッションがうまれることになったのです。

初回の「音響ジャムセッション」のメンバーはたったの3人でした。
1人目が、当然、発起人のキオトさん。
2人目は、最初に相談を受けた、松島玉三郎
3人目は、その松島が誘った、米本実。

キオトさんは、「くじら」を脱退したあとは、多少作曲や、ベーシストとしての仕事をしてましたが、「くじら」の中でももっとも自由人や彼は、自分のペースでしか音楽をやらなくなっていきました。あるときは川原でサクソフォンを吹いていたり、気が向くと「くじら」のメンバーとユニットをやったり、という風雅さです。おそらく、音の「風雅な出会い、あるいは、かたすかし」をやりたくて、このジャムセッションを思いついたと思われる。

さてさて、彼が持ってきた楽器は、まずは、i-book。ノートパソコンに簡単なコード感のあるループを作ってきて、これを鳴らして、そのうえに乗っかろ うという算段なのでした。さらに持ってきた楽器は、ウクレレサクソフォン(彼はサックスではなくサクソフォンという呼び名が好きです)、ケーナ(笛)、 など。

松島は、いちおう民族打楽器奏者ということで、打楽器をたくさん持ち込んだけれど、買ったばかりのDJセットも持ち込んだのでした。かねてより、DJセットを「ダンスミュージックではなく、効果音を出すもの」として使いたかったからです。その他、油彩キャンバスをマレットでたたいて鈍い低音を出してみた り、もみがらが入ったぬいぐるみをマイクの上でたたいた音を、ミキサーをいじってイコライジングを変えてみたり、へんてこなことをやったのです。

電子音楽界では有名人の米本実氏は、自作電子楽器たくさんとカシオトーンを持ち込んだ。自作電子楽器といっても、鍵盤のない発音機で、つまみがたくさんある、なにやらあやしげな機械たち。説明してもわからないと思いますので、彼のHPの自作楽器博物館を観てください。http://homepage3.nifty.com/yonemino/museum/museum.htm

こういう発音機を手にしてしまうと、ついついゼンエイ的な音楽をやりたくなってしまうものですが、あくまでユーモアのある音色とタイミングで、曲に切り込 んでくるのが、米本氏の真骨頂です。ちゃんと、作曲・編曲・演奏のできる人が、いわゆる楽器的でないものを使って、ちゃんとオンガクになるという独自性!

  へんな3人ですよね。
  この、得体のしれない初ライブにいらして
  くださった方々、本当に感謝してます。

当日は、松島のバンドのバイオリンの宮崎響子さんにも飛び入りしていただき、結局奏でられた音楽は、あの「ペンギン・カフェ・オーケストラ」をどことなく思わせるという、脱力音楽に仕上がりました。

そして、会場を提供してくれた、今はなき「渋谷ツインズよしはし」のママさんが持っていたMD機で、この日の演奏をたまたま録音していました。これが録音 されてなかったら、ジャムは1回限りで終わったかもしれません。しかし、録音されたものを聴きなおしたら、本人たちの予想を超えて面白かった!そして、このセッションはだんだんメンバーを増やして続行することになったのです。

●音響ジャムセッション、ははどのように増殖したか 1●

音響ジャムセッションは、会場は同じく渋谷ツインズよしはしを借りて続行することになったのです。
2回目には、くじらのヴォーカリスト杉林恭雄氏が新たに加わりました。
杉林氏が持ってきた楽器は、なんと尺八!

そう、彼はくじらの活動とは別に、趣味で尺八を習い始めていたのです。この頃はもう、習い始めて1年以上たっていて、尺八の生徒さんたちの発表会などにも出演してたらしい。でも、尺八を純邦楽以外に使ってみるのは、これが初めてであったはず。
杉林さんの尺八が加わったため、もともとキオト氏が持ってきていたアンデスの笛ケーナと、笛2本が鳴ることになったのです。2回目の音響ジャムセッションは、この笛2本がからみあいながら、途中から即興のメロディになっていくというパターンが生まれました。それを、米本氏の電子音と、松島の民族打楽器でバッキングしていくと、なんか1回目よりも楽曲的なものに仕上がってしまいました。
「なんか、ちゃんとした曲になっちゃったねえ。いいのかしら・・」
などといいながら進行した2回目。でも、ちゃんととっちらかった感じはみごとに残り、また、へんてこな音のぶつかり合いも健在。松島がターンテーブルでサントラ『タクシードライバー』のセリフの部分をかけると、杉林氏が尺八をもたずにヴォイス・インプロヴィゼーションで挑戦して来たり、キオト+杉林の2本の笛がアドリブしているところに、松島がフルートの多重録音のレコードをヘンな回転数でかぶせてみたり・・・そこにまた、たくみにとぼけた電子音を入れてくる米本氏。
今回はキオト氏が、パソコンを持ってくるのをやめて、コルグのヴォコーダ付きのシンセを持ってきたのも独特の味を出しました。変調されたヴォイスが鍵盤のメロディに乗って鳴り、しかしそこに切り込むのは尺八やアラブの打楽器、カシオトーンの音色などなど・・・という、、どういうグルーヴですか、これ?松島がもちこんだシンセドラムも、全然テクノぽくなく鳴り響き、まあ、2回目もとことん変でした。

(やってるぼくらはおもしろいんだけど、こんな音楽求めてる人いるの?)
・・・とちょっと思ったんですが、また録音を聴きなおしてみると、リスナーとして聴いても、そこそこおもしろいのです。

しかもこのとき、お客様として来てくれていたディジェリドゥ奏者が、私も参加してみたい、と名乗り出てくれてのです。
彼の名前は、米本篤(よねもとあつし)氏。自作電子楽器の米本実氏と、とても似た名前ながら、この篤さんのほうは、電子音楽界ではなく、即興音楽会で多少 知られた人でした。ディジェリドゥとは別に、ヴォイス・パフォーマーとしてヴォイス団Kuuというグループのメンバーだったり、ホーメイ巻上公一氏に 習っていたり、ユニークな人でした。音響ジャムはもともと、ポップ・フィールドの人が即興にアプローチしていたものなのですが、これを見て、ばりばりの即興フィールドの人が面白がってくれたのですね。
でも、つくづく、音響ジャムセッションは、ポップ・フィールドでも、即興フィールドでもない、なんかもっとちがう平面の、脱力音楽だったのです。それは、このセッションが続くにしたがって、どんどん確信にちかいものになってきました。

●音響ジャムセッションはどのようにリリースに至ったか●

kutaja2007-07-08

●音響ジャムセッションは、どのように増殖したか の2●

さてさて、音響ジャムセッションは、ディジェリドゥ奏者の米本篤(よねもとあつし)氏を迎えて、3回目に突入しました。
ディジェリドゥの通奏低音は、ベース奏者のいない低音域を埋めてくれるような感じにフィットしました。そして、ときどきディジェリドゥから口琴に持ち替えたり、ホーメイをしたり、有機的な効果音が加わった感じになりました。

2回目で、すでに「無から楽曲のようなものを立ち上がらせる」ことに成功していたので、逆にそれはねらわずに、お互い気ままに音を出し合ってみました。ときに、とりとめなくなり、ときに、楽曲的になる。このメンバーの持ち味は健在でした。メンバーがふえたため、松島がターンテーブルCDJを持ってくるのをやめて、生のパーカッションだけで挑んだのも、うまく作用したようです。(あまりにもたくさん打楽器を持ち込んだので、杉林さんからは「アート・アンサンブル・オブ・シカゴのステージみたいだ」と言われたっけ)

この3回目には、途中に設けた、1対1対決というコーナーがおもしろく仕上がりました。
杉林さんの尺八と松島のトーキングドラムの即興(CDに未収録)、米本実のカシオトーンと米本篤のディジェリドゥの「ツインズよねもと」対決は、フシギなエレクトリック・ポップ・インストになりました(CDに未収録)。キオト氏のコルグのキーボードと、米本実氏の自作電子楽器の対決は、6分以上のロング・セッションになり、なんか海外の電子音楽およびテクノの市場に出しても恥ずかしくない、緊張と脱力のある録音が残りました(『ヘクトパスカル』というタイトルで「いちじくジャム」に収録)。

この回には、キオト氏がケーナYMOの「ライディーン」のメロディを、スローテンポで奏で出した、というような笑えるパートもありました。ちゃんとみんな、それについて行くからエライ。摩訶不思議なセッションだったのは、米本実氏が弾き始めたカシオトーンのベースラインがラテンの名曲『グアンタナメラ』に似ていたので、つい松島がそのメロディを口ずさんだら、米本篤氏もホーメイを乗せてきて、さらに杉林さんがヴォイス・インプロヴィゼーションをかぶせて来た曲です。3名のヴォイスが、ゆるやかに、とくにハーモニーなどもねらわずに、ベースラインに絡みつきました。これは『100年間でできること』とタイトルをつけて「ざくろジャム」に収録しました。このメンバーによる即興は、いわゆるアドリブ合戦ではなく、むしろ「労働歌」のように、でたらめな歌詞を働きながら歌っているうちに、何がしかが出来上がってきた、というものに近いのでした。たぶん、そういう即興は、いわゆる即興音楽として売られているものの中には、あまりないのではないかと思いました。

この3回目を楽しんで見ていた人の中に、ラップトップ・ミュージシャンの加藤くんがいました。彼は、実は4回目に加わることになる人なのでした。もう、オズの魔法使いより、人数が多いです。ドロシー+かかし+ブリキ男+ライオン、は4名ですが、ジャムは4回目に6名になってしまうのでした。

●音響ジャムセッションは、はどのように飽和したか

音響ジャムセッションは、毎月開催されて、その度ごとに参加者が増えていきました。思えば、会場を提供してくれた渋谷ツインズよしはしさんも、よくこんなフシギなライブを根気良く見守ってくれたもんです(感謝してます)。4回目には、ついにラップトップでの参加者が登場。エレクトロニカ・クリエイターの加藤さんです。ライブ全体ではなく、途中に彼の「音響アプローチ」のコーナーを設け、皆はそれについて行く、という形で参加してもらいました。

この4回目には、ひとつ大胆な試みとして、『会場のPAシステムを使わない』ということをやってみたです!さらには、スピーカーの位置にこだわらなくて良いので、会場のセッティングも、演奏者が真ン中に立ち、まわりにお客様の椅子を配しました。つまり、演奏者がお客様に囲まれるかたちだったのすが、さすがジャムのメンバーはしゃれがわかる。一部の曲では、メンバーは動き回り、逆にお客様取り囲んでみたりしました。

この回に、地道にいい味を出してくれたのは、なんと米本実氏のカシオトーンによるサンプリング機能でした。たった今演奏されたディジェリドゥの低音を録音し、さらにその音程の1オクターブ下を鳴らて重低音を加えたり、サクソフォンを持ち込んだキオト氏のプレイをすかさずサンプリングし、プレイが続行している上にキーを変えて乗せてきたり・・・。目新しい方法でも何でもないのに、実に新鮮な感じに響きました。

しかし4回目を迎えて、みんな何かが「こなれて」きてしまったのでしょうか?
即興は明らかに「洗練度」を増していて、とても楽曲的な仕上がりを見せたのですが、3回目までにあっ「茶目っ気」が発露しませんでした。そう、なんだかフツーの「シリアスな即興」になってしまったのです。・・・即興なんだけど、どこか脱力していて、のれんに腕押し、みたいな不思議な魅力がある・・・といのが、このメンバーのジャムの特徴だったのに、このメンバーでなくてもできる「いわゆる即興音楽」なってしまった気がします。
そんな4回目だったからこそ、加藤さんがラップトップで参加した曲が、逆にみんな「無邪気」にはじけよかったりしました。加藤さんがノートPCの画面をみつめつつ、マウスですごい速度で制御しながら音響の音色を少しずつ変えて行きました。みんなは「とにかくついていくよー」という感じでしたが、他曲で見られた洗練をまったく捨てていて、はしゃぐように音を鳴らしました。このパートが一番ジャらしい『ほとばしりとかたすかし』があったように思います。(『いちじくジャム』に「エレキもなか」というタイトルで収録。加藤さんの名前はDJ名のSUBWAYとなってます)

この4回目を終えて、松島が「ジャムはこの方向でよいのだろうか?」と疑問を呈したら、みんなの中に少しずつあった疑問だったようで、一度ジャムはお休みにしようという事になってしまいました。

しかし、一度休んでしまうと「冬眠のように長い休みになってしまう」というのが、どうやらジャムの特徴だったようです。2003年の3月に休眠したジャムは、2007年に安部王子さんに呼び覚まされるまで、ずっと眠り続けてしまうのです。
しかし、その2007年までに、米本実氏と松島は、9時間弱におよぶ残った録音と格闘することになりました。名演部分を抜粋してリリースしようと、別の長い道のりが始まるのでした!

●音響ジャムセッションは、どのように編集されたか

音響ジャムセッションは休眠したけど、松島と米本実氏の前には、9時間弱におよぶ録音された記録があったのです。『単なるジャムセッションでした』と捨 てるには、あまりに惜しい、おのおののアーティストたちの「きらめき」が刻まれていました。同時に、「だらだらとした」部分もたくさん刻まれてました。これを、聴きまくって、面白かったり、はっとするような部分だけを選び出し、冗長な部分から切り離し、編集をしようというのです。編集するには、まずは全部 聴かなければなりません。聴けば9時間近くあるわけだけど、ニンゲンがものを真剣に9時間聴くのは、ものすごい重労働です!しかも、編集するためには、聴きなおしたりもするので、9時間以上聴かねばならないのです。二人は、その作業に取りかかったのです。

どこを捨てて、どこを残すか、とてもむずかしい。残しすぎると、切れ味がなくなってしまう。でも、短すぎれば、時間芸術的な盛り上がりを欠いてしまう。二 人は、とにかく聴いて聴いて聴いて、良さそうな部分をピックアップしました。そして、ピックアップしたところをパソコンに読み込ませ、その中で「切り張り」作業を始めました。どこで切るか、フェイドインやフェイドアウトは何秒にするか、何度も何度も試されました。真剣にやったあとはくたくたでした。1日やっ て、数曲分しか編集できなかったのです。二人とも忙しい日常のあいまにやっていたから、編集作業に取り掛かれるのが、何ヶ月かに1回という、超スロウなテンポで進行しました。だから、編集を終えるまで、2年以上がたってしまいました。

この編集作業が終わる前に、実は「音響ジャムセッション」は一度だけ復活してます。2004年の11月に、『シャボン玉な人々』という名前で、ふたたび渋谷ツインズよしはしでやりました。そのときのメンバーは、初回のキオト、松島、米本実に加えて、チェロと篠笛を弾きこなす星さんが、参加してくれました。 全体的に、和やかなセッションになりました。即興なのに、あらかじめメロディがあったかのようなニュアンス。チェロの持続フレーズが、そういう味を呼び覚 ましたかもしれません。それでも、松島が「ヘアドライヤー」と「ひげそり」の音しか使わない、というヘンなセッションもありました。惜しむらくは、この日 のお客様は3名のみ、ということ(演奏者のほうが多いよ)。この『シャボン玉な人々』は、なごやかに終了し、1回きりでまた休眠してしまいました。

さあ、米本実と松島の編集も大詰めです。2005年、とりあえず「面白い部分を抜き出す」作業を終え、今度はどういう順序で並べるか、という作業に突入。 松島が出した案がなかなか良く、「一気に聞かせる」パワーがあったため、すんなり採用されました。・・・・ただし、1枚に収めようと思った曲たちは、おさ まりきれず、2枚になってしまいました・・・・・捨てがたい曲が多すぎたのです。かわいくて、茶目っ気の多い曲を集めた『いちじくジャム』、ややシリアス で楽曲っぽい仕上がりのものを集めた『ざくろジャム』。

内容はできたけれど、アルバム・ジャケットはどうしよう。米本氏と松島は、前々から「即興音楽によくある、シリアスでデザイン・センスの高いような、えらそうなジャケットじゃなくて、かわいくて、へんてこで、女の子も、なんだこれ、と手に取ってしまう のがいいなあ」と考えていたのです。いろいろ検討した結果、昔マンガを描いていた松島が、動物2匹が森でお茶を飲んでいる、というイラストを2枚描きました。実はこのイラスト、ペンギン・カフェ・オーケストラの1枚目のアルバム・ジャケットへのオマージュなんですけど、気がついた方、いらっしゃるかしら?

この絵を、プロのデザイナーのキャンディ君という人が、破格値でデザインを施してくれて、安い印刷屋さんまでみつけてくれて、やっとジャケットができあがりました。これが、2005年の暮れです。この頃、おりしも「くじら」のメンバーが参加した「ザバカラクジラ」(ザバダックやくじら、などのメンバーから 構成される合体バンド)のライブがあり、そのライブ会場でジャムCD2枚の「初売り」がされました。大変好評で、売り切れてしまいましたが、このときかつてザバダックのプロデュースをしたことのある安部王子さんがいらしてて、そこでこの、ジャムCDが王子さんに手渡ることになるのです!

そして、2006年、王子さんは「ジャムの復活」を唱え、2007年5月20日、本当に復活してしまうのでした。さあ、新しい歴史が刻まれます。
皆様、レッツ・ジャム・ユア・ライフ!!

※2007年5月20日には、キオト、杉林恭雄、楠均(以上初期くじら3人)、いまみちともたか(元バービーボーイズ)、安部王子(R・O・M・A、元PSY・Sほか)、松島玉三郎鶴丸光、星衛の8人によって、音響ジャムは『まくわうりジャム』の名前で見事に復活しました。